はじめに
標題の本を読みました。
人気漫画、こち亀を40年間、一度も原稿を落とすことなく書き続けられた秘密について作者が語っています。
秘密というより、作者の生き方という感じですかね。
いくつか、抜粋して紹介します。
セルフマネジメント術
何であれ、好きでしょうがないことを見つけましょう。
作者はアニメーター時代から漫画化時代を通じて、仕事を苦痛に思ったことがないそうです。
好きな仕事につけている人は少ないかもしれませんが、それでも何かひとつ好きなことを見つけ、それに打ち込めたら、心に余裕が持てます。
昔、好きだったものでも思い出しましょうということでした。
変化を恐れないこと
当初、こち亀は警察のことだけをネタにしていて、下町ネタを取り入れる予定がなかったそうです。
編集者から提案されて取り入れたら、話の幅が広がり、好評を得ることになりました。
常に新しいものを取り入れて来たから、40年間飽きることなく続けられたとのことです。
とっとと見切りをつけて、次に向かうタフさも人生には必要
漫画の世界ではいくら徹夜で頑張って描いた漫画でも、面白くなかったら、すぐに連載を切られてしまいます。
そのとき、意固地になりすぎず、次のステップへ移るくらいの気持ちが大事だと語られています。
そのために、常日頃から自分を客観的に見ておくのもいいとか。
仕事ができる奴を羨むのは時間の無駄。応援して仲間になろう
羨んだり妬んだりするより、あいつすごいな、あいつのようになりたいなと思う方がプラスということです。
時間術
ひとつの仕事にかける時間を切り詰めて、余裕を生み出す。
作者は常にこち亀のストックを作っておき、余った時間を読み切り作成にまわしていたそうです。
そのため、締切を怖いと思ったことがないとか。
週7日かけるものを週5日に切り詰めれば、月で10日ほど余裕ができる。
その余った時間を描きたかった読み切りに回していたそうです。
また、余裕があるため、想定外の仕事が入っても対処できたとか。
スケジュールは他人任せにせず、自分で決めること
他人任せにすると、次は何をすればいいのかを気にするようになってしまう。
必ず自分で決めること。
作者は規則正しい生活を送っていたようで、勤務時間は9時から19時までとアシスタントにも徹底させていたようです。
また、本人も起床は7時半、仕事開始は9時と決めて、規則正しい生活を送っているそうです。
睡眠時間も規則正しく取っているとか。
コミュニケーション術
電話やメールよりも顔を見て話すのが一番いい
編集者などと会って顔色を窺っているほうが、作品への反応がわかりやすい。
また、相手もこちらの表情を見て、苦しんでいるなとわかってもらえる。
ただし、ショートメールやLINEのような短文形式のツールは感情が伝えやすいので活用しているとのことです。
仕事でイライラしはじめたら、同じところでとどまらない
漫画を描いていると、ひとつのコマがうまくいかず、イライラすることもあります。
(秋本治氏の場合は少ないようですが)
そんなときは、一旦、そのコマを放り出して、他のコマに手をつけていたとのことです。
そのためには、時間的な余裕を普段から作っておくことが大事だとのこと。
勇気を持って批判を受け流す。褒めてくれる人の声に応えるほうが建設的
漫画など、創作物を作っていると、必ず批判する人が現れます。
そんなとき、思い切って、批判は受け流し、褒めてくれる人の声に応えましょう。
すべての人から褒められることなど不可能です。
なお、作者はネット上などの評価をあまり見ないそうです。
発想術
人から直接聞く生の声が重要
作者は漫画に描きたいネタが見つかると、直接取材に行っていたそうです。
その方が本やネットよりいい情報が得られたとのこと。
そして、取材してたくさんの知識を仕入れたあとは、少し寝かせて、熟成した方がいい結果になったとか。
アイデアが思い浮かばないときは、こだわらず切り替える
作者も時には白紙を見てアイデアに困ることがあるようですが、そんなときは無理と割り切って、他のアイデアを探したそうです。
悩むのは時間の無駄と考えているとのこと。
ただ、どうなるかわからなくても、叩き台のような原稿を作ることはあるとか。
それを編集者に見せて、協力して新たな作品を作ったこともあるようです。
健康術
ストレスなく働いていれば、酒に頼る必要もない
作者はお酒を飲めないこともないそうですが、特に飲みたいとは思わないそうです。
仕事で疲れたあと、一杯飲むのが楽しみだとうサラリーマンが多いですが、そもそも作者は仕事をストレスと考えていないので必要ないとか。
日曜日の晩とか、普通の勤め人は憂鬱なものですが、作者は仕事が好きなので、むしろ楽しいのだとか。
これは、なかなか真似できる境地ではないですね。
嫌いな運動を無理にすることはない。好きなことと合わせてする
作者は運動をほとんどしないそうです。
少食なのもあるようですが、太ることもないとか。
ただ、取材が好きなので、そのときに外を出歩くのがいい運動になっているのかもということです。
未来術
新しいことに臆せず、首を突っ込んでいく
こち亀では100巻あたりから、デジタル化された商品などをどんどんと作中に取り入れたとのこと。
技術の進歩が急速に進んだ頃で、新しいもの好きとしては興奮し、歴史の一部として漫画に取り入れたいと思ったとか。
新しいものを両さんというキャラクターを通じて伝えられたことに意義があったと考えているとのことです。
最短で成功をつかみたければ、回り道を厭わないこと。
がむしゃらに、何事も選ばないで多くのことをやってきた人が、結果的に成功している。
チャンスは平等に落ちている。
そのためには、なるべく広い交流を持つことが大事ということです。
小さな目標を持つことが、大きなゴールに近づくことの唯一の方法
なんらかの目標を持つことは大事ですが、あまり大きなものではなく、目先の小さなことからでいい。
こち亀の場合はコミックス10巻を出すところまでが、ひとつの目標だったそうです。
そして、そこからが本当のスタートだったと思っているとのことです。
あらたな一歩を進みたいときは、具体的な成果を作っておくのが大事とも書かれていました。
実績を作ってきたこち亀だったからこそ、急に両さんが世界規模で活躍するようなことに反発がなかったとか。
最後に……私的感想
好きなことを仕事にして、それにストレスを感じることもなかった……
なかなか真似できることではないなとは思いました。
ただ、スケジュールを自分で管理して、空き時間を作るとか、思い切って批判を受け流すなんてことは、誰でもできることではないかと思いました。
それにしても、作者は漫画の求道者とでもいうか、生きる達人とでもいうか、本当に羨ましい人生を過ごしているなと思います。
おっと、羨んではいけませんね……
秋本治先生のようになりたいと考えたいと思います。
こち亀からの漫画の引用もふんだんにありますし、読みやすい本でした。
空き時間ができたら読まれることをおすすめします。
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