城山真一著「看守の流儀」刑務所が舞台の作品です。

ミステリ

作者と作品の概略

表題の本を読みました。


作者は城山真一氏。
「このミステリーがすごい大賞」を「ブラック・ヴィーナス」という作品で受賞されています。

ブラックヴィーナスはトレーダーを主人公にした作品ですが、この「看守の流儀」は加賀刑務所を舞台とし、そこに勤める刑務官たちが主人公となっています。
刑務官たち、と書きましたが、この作品は5話構成となっていて、すべてが違う人物の視点からの話となっています。
一応、火石司(ひいし・つかさ)という人物が各話の重要なポイントで登場し、物語を解決に導くような形となってはいます。
また三上順太郎という人物の手記が各話の最初に引用されています。
初めは意味がわかりませんが、最終話ですべてがわかります。

作品構成について

5話とも、それぞれ違うタイプの作品になっています。
1話ごとに話は解決していくのですが、前の話の主人公が次の話に脇役として登場するなど、一応、各話は繋がっているような作りとなっています。
刑務所を舞台にしているので、個性豊かな受刑者たちがいます。
彼らに対する刑務官たちも個性のある人間です。
それぞれに人間ドラマがあり、泣かせるような話もあります。
一方、塀の中でも悪いことをしている受刑者もいますし、不祥事を隠したくて、あたふたしている上司なんかも登場します。
刑務官も公務員ですからね。
不祥事など起こしたくないというわけです。
そのあたりは、こんな人間いるよな……という感じで楽しく読ませてくれます。
また作者は入念に刑務所を取材されたのでしょうか。
当然、刑務所のことに関して書かれた部分は非常にリアルです。
刑務官って、こんな仕事をしているのか、と初めて知ることが出来ました。

最後に「やられたー」という感じになります

楽しく読み続けていたのですが、いつの間にか登場人物に感情移入していました。
しかし、これが作者の張った罠で、最終話の途中で「しまった!」「やられた!」と感じた自分がいました。
見事に罠にハマってしまいました。
まあ、心地よいだまされ方ではありましたが……
さすが、このミス大賞受賞者の作品です。
一筋縄ではいきません。
しかも、意外な展開は一段構えではなく、二段、三段とたたき込まれます。
そのあたりは読んでみて、見事にやられたと感じてみてください。
文章は読みやすかったです。
340ページほどある作品ですが、一気に読破することができました。
おすすめできる一冊です。

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