はじめに・古事記異聞シリーズとは?
意外な歴史の見方を教えてくれる作家高田崇史氏。
「QED」シリーズが特に有名です。
この古事記異聞シリーズは、女子大生が各地をフィールドワークするストーリー構成で、シリーズ四作目となります。
以前、三作目を紹介したことがあります。

簡単なあらすじ
東京の大学に通う橘樹雅(たちばなみやび)は、研究の題材として、古代出雲の謎に挑んでいます。
初めは出雲そのものを訪問しますが、やがて、京都にも出雲に関連する場所があることを知りました(三作目)。
そして、奈良にも出雲に関する地名があることを知り、京都で知り合った民俗学研究者、金澤千鶴子と共に奈良の大神神社を訪れるのでした。
大神神社を訪問すると、拝殿が三輪山の頂上を向いていないことに疑問を感じ、やがて、長谷寺や石上神宮を訪れ、最終的には出雲国風土記になぜかスサノオとヤマタノオロチ伝説が記載されていないかを知ることになるのでした。
今作の特徴
いつもの高田崇史作品では、必ず歴史の謎を解くおまけとして、殺人事件が起こり、そちらの謎を解く楽しみもあるのですが、今作にはありませんでした。
ただし、主人公たちに警告する謎の勢力を率いる老人が登場します。
今回で出雲編は完結していますが、次は伊勢の謎を解く話になるようで、これからも登場する可能性がありそうでした。
今作で解ける謎
・なぜ出雲風土記にスサノオとヤマタノオロチ退治の逸話が記されていないのか?
・なぜ大神神社の拝殿は山頂を向いていないのか?
・長谷寺のある地域は、元々どういう場所だったのか?
・武烈天皇や雄略天皇について。烈という漢字の意味することは?
・相撲の開祖、野見宿禰に関すること
・伊勢の神と三輪の神とのつながり
……など、多数あります。
少しだけネタバレ
作者はQEDシリーズの中でも取り上げているのですが、出雲国風土記の出雲と、スサノオが登場する出雲は違う場所ではないかと唱えています。
タイトルにもある通り、奈良(大和)にも出雲という地域が元々あり、スサノオが活躍した出雲はこちらだというわけですね。
この作品はその説を補完する形と言えなくもありません。
しかし、読んでみると、無理なく証拠が並べられて行き、論理に破綻がないので、真実にしか思えなくなります。
最後に
歴史好きの方には是非読んでいただきたい作品です。
歴史を題材にしているので、どうしても漢字がひんぱんに登場しますが、文章自体は平易で読みやすいです。
260ページほどの作品ですが、スラスラとあっという間に読めました。
歴史に興味がない方でも、特別深い知識がない女子大生の視点から描かれていますので、一作目から手に取って読まれると、歴史に興味が湧くかもしれません。
おすすめです。
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