標題の本を読みました。
作者は志駕晃氏。
「スマホを落としただけなのに」で鮮烈なデビューをされた方です。
ラジオ番組のプロデューサーとしても有名な方です。
また、過去には漫画家もされていたとか。
以前、こちらの作品を紹介したこともあります。

どんな作品?予備知識
今回は「スマホ」という単語がタイトルに入っているものの、過去作のようなメインアイテムにはなっていません。
過去作とはつながりがなく、ダークウェブもサイコパスな殺人鬼も出て来ません。
主人公はふたり。
週刊誌記者の新垣友映(あらがきともえ)と、女子大生の相沢咲希(あいざわさき)のふたりです。
新垣友映が活躍するのが令和元年、相沢咲希が活躍するのが平成30年という形になっています。
この作品は書き下ろしではなく、週刊誌(女性セブン)に連載されていた作品であるため、作品中に実際あった出来事がたくさん話題として登場します。
改元やコロナ騒動、芸能スキャンダルやスポーツの話題など盛りだくさんです。
「リアルタイム殺人事件」などと帯には書かれていました。
また、作品中に実際の週刊誌風に書かれたページが3回ほど登場します。
簡単なあらすじ
令和2年、週刊誌「女性エイト」の記者、新垣友映の元に鎌倉の由比ヶ浜で女性の全裸遺体が見つかるという事件の知らせが届きます。
興味を持つ友映は取材を考えますが、もうひとつ「パパ活」なるものが女子大生の間でジワジワと広がっているという話題についても調べるよう指示を受けます。
一方、平成30年、女子大生の相沢咲希はバイト生活に疲れ果てていました。
実家の経済状況がよろしくないため、奨学金や生活費を稼ぐために働きづめなのでした。
そんな咲希を尻目に、同じ大学に通う友人の里香は贅沢な生活をしていました。
女子大生としては不相応な高級ブランドバックを持っているなど、明らかに景気のいい様子です。
里香は金持ちの男性と食事をしたり、時には肉体関係にまで達する「パパ活」をしていたのでした。
苦しみから逃れたかった咲希は、少しだけなら……と里香に誘われ、自らも「パパ活」に参加します。
里香からは斡旋役の翠という女性を紹介されるのですが……
ストーリーはこのふたりの視点から、描かれます。
読者は令和2年と平成30年を行ったり来たりします。
私的感想
結論から言うと、面白く読めましたが、過去作と比べるとどうかな……という感じでした。
過去作のようにスケールが大きければいいというわけではないですが、不気味なホラー要素には欠けたかなと。
ですが、さすがは志駕晃作品。
ラストの二転三転する展開は健在ですし、「パパ活」についてもリアルに描かれています。
週刊誌とリンクした試みも面白く感じました。
社会風刺的な部分もありました。
コロナ対策でも年寄りばかりが優遇されているとか、貧しいゆえに女子大生は「パパ活」や夜の世界に飛び込むとか……
考えさせてくれる作品でもありました。
過去の志駕作品とは少し毛色が違いますが、十分面白い作品なので、ぜひ手に取って読んでみてください。
コメント