標題の本「あなたもスマホに殺される」を読みました。
作者は志駕晃氏。
当サイトでも何作品か紹介したことがありますが、「このミステリーがすごい」大賞・隠し玉作品「スマホを落としただけなのに」で鮮烈なデビューを飾られた方です。
以降、主にスマホやインターネット、SNSを便利な道具である反面、使い方を間違えると恐ろしいものになるという題材で作品を書かれています。
得体のしれない見知らぬ相手とつながってしまうという怖さを教えてくれる一種のホラーですね。
「あなたもスマホに殺される」・あらすじ
平凡な主人公の中学教師、鈴木信二は美人の奥さんと優秀な子供に恵まれ、つつましい生活を送っていました。
優秀な子供を私立学校に通わせたいなと思いながらも、教師の給料ではな……と嘆いているような日々でした。
また、鈴木はスマホ中毒でもありました。
朝の3時までブルーライトで眠れず、起きているくらいでした。
そんな鈴木のスマホに、ある日突然「自殺相談室」という新しいSNSからの招待メールが届きます。
「悩んでいる相手にアドバイスをするというゲーム感覚のSNS」という紹介がされています。
相談相手はなんらかの事情を抱えていて、悩みの内容に対して、4択で意見を選ぶ形式となっています。
例えば「ひどいいじめにあっています」という悩みに対して「先生に相談する」「友達に相談する」「親に相談する」「自殺する」の選択肢が届くという具合です。
初めは怪しいと思う鈴木ですが、答えて行くうちにその後の経過が気になり、夢中になっていきます。
ある日、選択肢に行き詰まり「自殺する」を選択したところ、「第1ステージ卒業です」というメッセージが。
さらにはポイントまで手に入り、貯めると換金できるという方式だとわかり、小遣いの少なかった鈴木はますますハマっていくのでした。
スマホを休み時間中、熱心にいじっている鈴木を見て、同僚の教師たちも興味を持ちます。
さらには生徒たちも……
しかし、このサイトが話題になるにつれ、鈴木は怖くなっていきます。
相談相手と思われる人物が本当に自殺してしまうという出来事が起きたり、サイトを紹介した同僚の教師が自殺したり……
恐怖心から、一度はアプリを削除する鈴木でしたが、「怖いもの見たさ」という感覚が抜けず、再び、このSNSにズルズルとハマって行くのでした。
「あなたもスマホに殺される」・私的感想
実に面白く、続きが気になり、一気に読んでしまいました。
スマホ中毒ならぬ、スマホ題材小説中毒となってしまいました。
SNSの得体のしれぬ恐ろしさを感じながらも、このSNSは何のためにあるのか、どう話を収束するのか先が気になって仕方がなくなりました。
さらには主人公の周囲にもSNSがらみかと思われる変化が起こり、恐ろしさが増していきます。
若い女性だと思って、会いに行ったら、イメージと全く違う女性がいて、しかも、相手がストーカー気質だったなんてエピソードは、現実にもありえそうなシチュエーションです。
ホラー小説としても、推理小説としても楽しめます。
私は最後のページの最後の一文に「やられた!」と舌を巻きました。
作者の仕掛けた罠に見事に引っかかってしまいました。
伏線はいくつも張られていたのに、思い込みによって、まったく気づいていませんでした。
その罠が何なのかは読んでみて味わって見てください。
ぜひ、読んでいただきたい作品です。
おすすめの一冊です。



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