道尾秀介著「雷神」優しく語られる悲しいミステリ

ミステリ
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標題の本「雷神」を読みました。


作者は道尾秀介氏。
人気の作家さんですが、不思議と私は今まで縁がありませんでした。
今回、初めて道尾ワールドに踏み込んだわけですが、踏み込んでみて良かったと心の底から思いました。
以下に紹介と感想を述べます。
なおネタバレはありません。

「雷神」あらすじと紹介

主人公は埼玉で小料理屋を営む藤原幸人という人物です。
冒頭、悲しい交通事故が起きます。
幼い娘の夕見(ゆみ)が誤ってマンションのベランダから植木鉢を落とし、車に衝突。
パニックを起こした運転手は、主人公の妻であり、夕見の母である悦子を跳ねてしまい、死亡事故が起こったのです。
主人公は警察や加害者に依頼して、夕見にはこのことを内緒にしてほしいと願います。
彼らは協力を約束します。
そんな夕見も大学生になり、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていたのですが、ある日、謎の男から一本の電話が入ります。
男は「秘密を知っているぞ」と金を要求してくるのでした。

このあと、主人公は姉と娘を連れて、父母の故郷である新潟の村に向かいます。
新潟は30年前、昭和の終わりを迎える頃、悲しい出来事があって立ち去った場所でした。
村祭りの日、特別に作られたキノコ汁を食べた村の名士4人のうち、2人が死亡。
主人公の母は神社から離れた場所にある川で倒れているのが見つかり、その後死亡。
さらには主人公とその姉も雷に撃たれるという悲劇を味わいます。
しかも、主人公の父がキノコ汁に毒キノコを入れたのを目撃したという神社の巫女が「秘密を守る自信がない」と手紙を残し自殺。
いい思い出のない場所でした。
偽名を使い、村を訪れる主人公たちは、調査を続けていくうちに、30年前に起きた事件の真相に近づいていくのですが……

私的感想

読み終えて、最初に思ったのは、緻密に編み込まれた物語だな……と。
ラストに伏線が回収されて行くところで、「ああ、こういうことだったのか……」と見事さに舌を巻きました。
400ページほどある分厚い本ですが、先が気になって、一気に読んでしまいました。
途中、やや冗長的な部分がありますが、それもラストへ向かう大事な部分でした。
犯人はなんとなく、予想がついていたのですが、トリックには完全に引っかかりました。
少しネタバレ的なことを書くと、すべてが勘違いから始まっていたのです。
ただ、ラストはなんとなくバッドエンド的というか、救いようがない悲しい物語だなという感じです。
というより、全体的に暗い話ではあります。
もっとすっきりするような明るい話を読みたい方には向かないかもしれません。
ですが、謎解きだけではなく、深い人間ドラマも読み込みたい方はハマれると思います。
道尾秀介氏の作品は初めて読んだのですが、他の本も読みたいと思いました。
万人向けかというと、少し違うかもしれませんが、ハマる人はとことんハマる作品だと思います。
一度、手にとって読んでみてください。

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