標題の本、「徳川埋蔵金はここにある」を読みました。
作者は鯨統一郎氏。
歴史をネタにした作品が多い作家さんです。
「タイムスリップシリーズ」や「桜川東子シリーズ」など、主人公や舞台設定を変えて、多くの作品を発表されています。
独特の視点を持っておられて、意外な歴史の見方で驚かせてくれるのが特徴です。
大量のウンチクや論理でねじ伏せるのではなく、キャラクター同士の何気ない会話の中に、そっと謎解きの答えが添えられているという感じの演出が多いです。
そのため、非常に読みやすいのも特徴です。
「徳川埋蔵金はここにある」簡単なあらすじと紹介
本書は「歴史はバーで作られるシリーズ」の2作目にあたります。
場末のバーに、歴史学会のホープとされる若い教授と教え子の学生、美人のバーテンダーと常連の老人が集まり、歴史談義が繰り広げられるという形式となっています。
ちなみに登場人物は違いますが、鯨統一郎氏のデビュー作「邪馬台国はどこですか」も同じ形式で書かれています。
作者の得意とするスタイルなのかもしれません。
本書には連作中編が4篇収録されていて、そのうちのひとつが徳川埋蔵金について触れられています。
他の3篇は「竜とドラゴンは別の生物」「サルでも判る応仁の乱」「遠い国から来た天草四郎」となっています。
作品の視点は教え子の学生が語る形式となっています。
語るというより、心の声をつぶやいているという感じです。
常識論を語る教授に対し、大胆な推論を語る美人バーテンダー、バーテンダーを援護する老人という形でストーリーは続きます。
最後は大胆な説の前に大学教授が敗れるというのがお約束なパターンではあるのですが、そこに至る討論が非常に興味深く、面白いです。
「徳川埋蔵金はここにある」私的感想
当ブログでは過去に高田崇史氏の作品を何作か紹介していますが、私はいわゆる歴史の謎を解くミステリーというものが好きです。
鯨統一郎氏の作品については、デビュー作の「邪馬台国はどこですか」を初め、何作か読んでいます。
特にこのバーで会話形式で歴史の謎が解かれていくというシリーズは非常に読みやすく、発売されるたびにおさえています。
今回も期待に違わぬ面白さでした。
特に面白いと思ったのは、「遠い国から来た天草四郎」です。
天草四郎の正体に迫った話なのですが、「ああ、そうだったのか……」と驚かされました。
難解な用語やウンチクを並び立てるのではなく、やさしく教えてくれるのが鯨統一郎作品の良さだと思っています。
そのため、歴史に詳しくない人にも読みやすいです。
情報量としては多いわけではないので、「この説は本当かな?」と思ってしまうこともあるのですが、論理的には破綻していません。
むしろ、自分で調べたくなってしまうのが、鯨統一郎作品の良さではないでしょうか?
とにかく気軽に読める作品ですので、歴史にそれほど詳しくない人でも楽しめると思います。
ぜひ、手にとって読んでみてください。
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