水道橋博士:著「藝人春秋Diary」紹介と感想 著者渾身のルポ60作。

芸能系

標題の本、「藝人春秋Diary」を読みました。
著者は水道橋博士。
たけし軍団のメンバーで、お笑いコンビ「浅草キッド」の小柄なほうの方です。
過去にも同様の本を出版されています。



著者曰く、1作目は絶賛されたが、2作目、3作目は売れなかったということです。

本書の紹介

過去作と同様、「週刊文春」誌上で連載された人気記事をまとめたものです。
今作では60本の記事がまとめられており、555ページにも及ぶ分厚い本となっています。
この連載には「著者が芸能界に潜入したルポライター」というコンセプトがあるそうです。
浮世離れした、言葉を変えると奇人変人が多い、有名人たちの仰天エピソードや裏の顔を独自の視点と体験談から紹介されています。
今作では芸能界だけでなく、政界の人物にまで切り込んでいるのが特徴です。
取り上げられている人の名前を何人か挙げると、政治家では、安倍晋三、麻生太郎、野中広務といった面々。
芸能人では、内田裕也、樹木希林夫妻、小泉今日子、竹下景子、萩本欽一、ウディ・アレン、松本人志、太田光、そしてビートたけしといった具合です。
実際に会ってみての体験談もあれば、推測から書かれているルポもあります。
なお、挿絵は漫画家の江口寿史先生の手による各人のイラストで、ファン必見の出来栄えです。

私的感想

私は水道橋博士の著者を何冊か読んでいます。
水道橋博士はブログが社会に認知され始めたぐらいから毎日日記をブログで公開されている方で、記録魔と言ってもいい存在です。
毎日が記録されているので、◯年◯月◯日に誰々と会ったという情報が簡単に確認できるそうで、今作にもそれが活かされています。
文章を書きなれておられるのでしょう、文体が非常に面白いです。
物の例えが絶妙というか、文脈の中に散らされている小さなギャグが、読む側をニヤリとさせ、飽きさせません。
また、大げさなくらい相手を特別な存在に見せるのが上手です。
火のないところに大火事を起こすかのごとき文章です。

個人的にはO倉智昭(原文ママ)さんのヅラネタがツボでした。
内田裕也、樹木希林夫妻の破天荒なエピソードも面白かったですね。
爆笑問題の太田光との因縁は、本当なのか、プロレス的な演出なのか、未だにわかりません。
「大げさに書いているだけじゃないのか?」「フィクションじゃないのか?」と、思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのあたりの際どいラインの胡散臭さも本書の魅力です。

なお、笑わせるだけでなく、しんみりとするような回もありました。
著者が過去を語る回や、最後に収録されている母親の葬儀に関する回は、それらの代表です。
苦労して人気者となった著者の素顔が垣間見れるのも、悲哀を感じさせてくれます。
一方で家族のことでは、奥さんとの偶然が重なった上での出会いや、子どもたちのことに触れているのも興味深い内容でした。

しんみりするようなところもありますが、基本的にはギャグが多数散りばめられたエンターテイメントな作品です。
笑えることも間違いありません。
555ページにも及ぶ分厚い本ですが、60作に分かれているので、1エピソードは9ページ程度。
しかも、内1ページは江口画伯の絵ですから、実質8ページ。
なので、今日は何人分読んでみるかという具合に、小刻みに読むこともできますし、気になる人物のエピソードから読むことも可能です。
まずは、手にとって読んでみてください。

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