高木ブーさんといえば、ザ・ドリフターズのメンバーとして、日本で知らない人はいないのではないかというレベルの有名人です。
「この本には僕の90年のすべてが詰まっている」と最初の一行目に書かれているように、この本では自身の歴史、ドリフの歴史、当時の社会情勢などについて語られています。
ブーさんを慕う著名人たちの寄稿もありますし、若き日のブーさんやドリフメンバーとの写真、家族写真なども多数掲載されています。
基本的にブーさんが語る形で文章化されています。
「今まで秘密にしてきたことも含めていっぱい詰まっている」と、初めて公開されるエピソードも語られています。
この本の構成
「ザ・ドリフターズ」の素晴らしいメンバーたち
ドリフの各メンバーについて語られています。
いかりやさんについては「バンドをやるタイプの顔じゃないとは思ってたな」と毒舌も。
ギターの腕を買われて誘われたのかと思ったら、「デブだから誘った」と言われたとも。
いかりや家と高木家で温泉旅行に行ったことがあるなんて秘話も。
「ドリフはいかりやさんというコントの鬼が精魂込めて作り上げた最高傑作」という一文が印象的でした。
仲本さんについては交通事故で亡くなられたあとだったので少ししんみりとした内容でした。
最後に5分だけ会うことができたとか。
いかりやさんは著書の中で「仲本の歌は下手」と書いていますが、ブーさんは「歌の実力はたいしたものだった」と語っています。
加藤さんが交通事故の関係で謹慎処分を受けたとき仲本さんが代役を見事に務めたわけですが、「加藤が復帰したあと、元の脇役にあっさり戻ったことがすごい」とブーさんは褒めています。
加藤さんについては「天才的なコメディアン」と絶賛しています。
志村さんは努力型だけど、加藤さんは天才肌だと。
「ふたりでもっとやればよかったのに、別々に活動するようになったのは残念だった」とここだけの話として語られています。
荒井注さんについては「異能の人」という評価でした。
リーダーより年上というのはどうかということで、わざと年下にサバを読んでいたエピソードを語られています。
「武道館でビートルズの前座を務めたときは、ステージにピアノもオルガンもなかったからギターを持っていたがアンプに繋がれていなかった」という話も。
脱退が決まってから最後までの半年間は鬼気迫る面白さだったと。
志村さんについては、「今も死んでいない」と思っているとのことです。
荒井注さん脱退後、候補になった人物がいましたが、「若い志村がいいよ」と加藤さんが推薦したエピソードも語られています。
志村さん以外の4人は元々ミュージシャン志望だったけども、志村さんは初めからコメディアンを目指していたこと、メンバーより10歳ほど若いことで新しい感覚を持ち込んでくれた、加藤さんとふたりでオチを分散することでコントに幅ができたと語られているのが印象的でした。
ドリフに加入、そして「全員集合」の思い出
この章ではドリフの歴史と伝説の番組「8時だヨ!全員集合」について語られています。
いかりやさんは実は三代目のリーダーだとか、有名な5人に固定されるまでのメンバーの変遷。
ブーさんがドリフにスカウトされたいきさつ。
お笑い番組で10週連続で勝ち抜いた経験。
ビートルズの前座として武道館の舞台に立った裏話。
(実は出番が終わったあと、こっそり誰もいない場所でステージを見ていた)
全員集合の有名な三大事件(三人ドリフ、火事、停電)
などなど、当事者しか知らないエピソードが満載でした。
一番印象的だったのは「全員集合はひょうきん族に負けたわけじゃない。笑いの方向性がまるで違う」という一文でした。
別ジャンルの戦いであって、比較するものではないと。
「作り込まれた笑いを公開生放送で見せるスタイルが番組として役割を終えたということ」だということでした。
子ども時代、ウクレレの出合い、そしてプロに
この章では自分の生い立ちから、子ども時代のこと、そして現在のことまでブーさん自身の歴史が語られています。
東京巣鴨で生まれたものの、空襲で家が焼かれた千葉県柏市に逃げたこと。
自身は6人兄弟の末っ子で一番上の兄とは19歳も年が離れていること。
裕福な家庭で育ち、映画を見たり、ジャズを聴くような環境だったこと。
陸軍の航空学校を受験するつもりでいたこと。
兄から15歳のときにウクレレをプレゼントしてもらったのがウクレレとの出合い。
ブーさんが恩人と思っている人は3人いて、ひとりはいかりやさんで、もうひとりがウクレレをくれた兄で、もうひとりはウクレレが上手でいろいろと弾き方を教えてくれた転校生の古川くんだそうです。
ボクシングを習ったことがあるなんて意外な話もありました。
ウクレレという相棒がいてよかった
この章ではドリフから離れてウクレレ演奏家として活躍するブーさんについて語られています。
ウクレレを通じて出会った様々な人についても。
有名な筋肉少女帯の「元祖高木ブー伝説」発売のいきさつについても述べられています。
なお、ネット上では「若いやつが馬鹿やってがんばろうとしているんだから許してあげようよ」とブーさんが語ったことになっているわけですが、本人はそのようなセリフを言った記憶はないそうです。
そんな気持ちではあったから事務所に断らず、勝手に許可を出したそうですが。
ウクレレを再びちゃんとやろうと思ったのは奥さんの死がきっかけだったという話もありました。
雷様のコントの裏話にも触れられていました。
僕のアロハな毎日は家族のおかげ
この章ではタイトルどおり、家族への感謝や現在の家庭環境について述べられています。
90歳のブーさんは娘のかおるさん夫妻と同居しており、孫のコタロウくんとも仲が良いそうです。
お孫さんはカメラに夢中で写真の勉強をしているとか。
ブーさん自身は絵が得意で画集を出したら結構売れたというエピソードも。
娘さんとの旅行や、亡くなった奥さんへの感謝を伝える話は涙を誘います。
自分のお葬式ではお坊さんにお経をコーラスで読み上げてほしいということでした。
野心がないからここまでやってこれたという一文が印象に残りました。
ブーさんと私
この章はブーさんが語るのではなくて、加藤茶さん、海老名香葉子さん、関口和之さん、赤井英和さん、大槻ケンヂさん、高城れにさん、安達正観さん、荻野目洋子さんといったブーさんと親交のある有名人たちが寄稿しています。
特に大槻ケンヂさんはヒット曲「元祖・高木ブー伝説」発売の際に、高木ブーさんにお世話になっているだけにひたすら感謝している姿勢が見られました。
なお、最後に高木家の家族による座談会が収録されています。
個人的感想
自らを「第5の男」と謙遜される高木ブーさん。
「野心がないからここまでやってこれた」と語る高木ブーさん。
そんな優しく、気取らない人の良さが文面からあふれ出る一冊でした。
「第5の男」と言いながら、「ドリフは起承転結があってウケるわけであり、自分の役割はオチにつなぐことだから何を言われても気にしていない」という趣旨の発言があり、そこにはプライドも感じました。
高木ブーさんの著書には「第5の男」という本があり、そちらもすでに読んでいたのですが、この本で新しく知る事実もたくさんありました。
ドリフファン、高木ブーさんのファンだけでなく、人生の達人の生き方を学ぶという意味でも読んでいただきたい本です。
というより、気楽に読んでもらいたい本とブーさんも思っていらっしゃるのではないでしょうか。
とても読みやすく、面白い本ですから、ぜひ手にとって読んでください。
コメント